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法螺貝 住職の法話

平成二十一年一月発行

『無事これ貴人』

一月一〇日は臨済宗の宗祖臨済禅師の御命日です。妙心寺派宮城福島教区四部では部内会と合わせて臨済忌という法要が営まれます。臨済禅師は唐の時代の禅僧で、その言行は臨済録という書物に纏められています。臨済録の代表的な言葉として「無事これ貴人」というのがあります。この言葉に限らず臨済録には無事という言葉が頻繁に使われるのですが、「ただ平常無事なれ!トイレに行ったり、食事をしたり、服を着脱したり、そして疲れたら休んだら良いでは無いか!」などというくだりを読むと、臨済宗というものは随分気楽なものだな!と感じます。そして我々僧侶は臨済宗の専門道場で行われる修行の厳しさとの、少なからぬギャップに驚かされます。

 しかし、日常生活において 心に波を立てず、平常無事に活きるなどということは、並大抵のことではありません。臨済録には下記のような一節があります。「是れ娘生下(じゃうしゃうげ)にして便ち會するにあらず、還って是れ體究練磨して、一朝に自ら省す。」(これは母親から生まれただけで理解できることでは無い。精進を重ねることによって、ある朝ハっと自ら気付くことが出来るのである。)つまり、努力に努力を重ね、失敗に失敗を重ねることによって、自分自身の本当の「無事」に気付くことが出来というのです。私達がテレビのドキュメント等で苦労を重ねたお年寄りの笑顔に心を打たれたりするのは、この本当の無事―もっと具体的に言えば「生かされていることに対する根源的な感謝」「是も非も無い心」というものが表情に表れているからに他なりません。

 臨済録は「語録の王」とも称され、読むととても元気の出る語録です。岩波文庫からも出版されておりますので、是非読んでみて下さい。「無事これ貴人」という一見のんびりした語句も、臨済録の闊達な言い回しに触れると非常に積極的で活き活きとした意味に感じられる筈です。

 
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