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法螺貝 住職の法話

令和七年五月発行

「道具を使う?道具に使われる?」

 孔子の弟子である子貢がある国を旅しているとき、ひとりの農夫に出逢いました。その農夫は畑に水を撒く為に井戸に下り、甕で水を汲んでは畑に水を掛けています。甕は農夫の小脇に抱えられる程度の大きさですから農夫の努力に反してまったく効率は上がりません。それでも黙々と農夫は同じ作業を繰り返しています。
 その様子を見て子貢は言いました。「おじいさんはハネツルベという機械を知らないのですか?それは柱に横棒の中央を一点で支え、横棒の片方に石を括り付けて重くし、反対側には桶をくくりつけて、石の重さを利用して井戸の水を汲むのです。これを使えば一日に百畝(うね)にだって水を撒くことが出来ますよ!」
 農夫の老人は少し憤然しつつも笑いながら言いました。「私の師匠から教えられたよ。カラクリを使う者は心の中でカラクリを巡らせ、純粋潔白なものを失い、心が安定しなくなる者だよ!私はハネツルベを知らないわけじゃない。恥ずかしいから使わないのだよ!」
 AIが人の頭脳を肩代わりしてくれる現代にあってはハネツルベのような原始的な道具を使ったくらいで、純粋潔白なものを失うと言われてもピンと来ないというのが正直なところです。かく言う私なども、既にパソコン無しに文章は作れないと断言出来るほど便利な道具に依存して生活しています。
 しかしだからこそ思うのです。人として幸せに生きる為に一番大切なものは何だろう?インターネットやパソコン、スマホが無くなったら生きて行けないのだろうか?たまにはそんな反省をしながら、便利な道具に使われること無く、使いこなして日々大切な時間を過ごしたいものです。

 
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