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法螺貝 住職の法話

令和七年四月発行

「天上天下」

 四月八日は花祭り。お釈迦様の誕生日です。花祭りという言葉自体はそう古いものでは無く、本来は降誕会とか灌仏会と呼ばれる法要です。スリランカ、ミャンマー、タイ、チベットなど多くの仏教国ではお釈迦様の誕生日、お悟りの日、入滅の日は同じ日だったと信じられており、上座部などお釈迦様時代の仏教をとても大切にする仏教ではインド暦二月満月の日を誕生、成道、涅槃の日にしています。
 日本や中国がこの伝統に従っていないのは恐らく経典の翻訳から生じたものなのでしょうが、お釈迦様の大切な記念日がそれぞれ別であるというのは、四季のある民族にとって情緒的にその生涯を受け入れるのに相応しいですし、生命の息吹溢れる春に誕生されたというのは聖者誕生の喜びを演出するのに効果絶大だと感じます。
 ご承知のようにお釈迦様は釈迦族の王子として誕生されました。お釈迦様の父王と生母であるマーヤ様はなかなか子宝に恵まれずやっと誕生したのがお釈迦様、ゴータマ・シッダルタ王子でした。お釈迦様誕生の逸話はよく知られていますね。お産の為に実家に帰る道すがら、ルンビニー園という場所に立ち寄ったマーヤ様は花盛りの無憂華をひと枝手に取った際にお釈迦様はマーヤ様の右脇の下からお産まれになり、東西南北にそれぞれ七歩歩み、片手は天を片手は地を指差して「天上天下唯我独尊」とおっしゃったというのが誕生のストーリーです。
 実は日本ではあまり触れられていませんが、お釈迦様は「天上天下唯我独尊」の後に「これが私にとって最後の誕生である。私は生と老と死の苦をうち滅ぼす。」と宣言しています。「私は前世で様々な良い行いを修し、ここにこうして世界の第一人者として誕生した。私はこの生涯であらゆる迷いをうち滅ぼして悟りを開き二度と生まれ変わることは無いだろう!」というのが天上天下云々の本来の主旨です。
 それはそうと本当にお釈迦様は生まれてすぐにこのような難しいことをおっしゃったのでしょうか?私は違うと思います。きっと「おぎゃあおぎゃあ」と元気な産声をあげて誕生したに違いありません。しかしその産声、お母様のマーヤ様には特別な響きをもって聴こえて来たのでは無いでしょうか?長年期待されてやっと誕生した我が子!健康でしかも王家の後継者となる男子です。(私は産まれて来る子供が男女の別無く祝福されるべきだと思いますが、二五〇〇年前の価値観ですとやはり男子の誕生は嬉しかったと想像します。)
 マーヤ様の感動と安堵、そして誇らしい気持ちを仏教的に表現したのがまさに「天上天下唯我独尊」=この子は誰よりも素晴らしい!だと私は思います。人は皆、母体で一定期間育まれ、さらに生後も独り立ちするまで、他の動物よりも長い年月を必要とします。本当に本当!にたくさんの「おかげさま」を被る有り難い存在です。

 
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