雲居禅師による一行書です。細字で法語のような作品が多い雲居禅師ですが一行書は少なく、本作のような茶席に掛けられる語句となると極めて希少です。あまり字を崩すことなくしっかり書かれた墨蹟で、後述の禅語の内容も相まって清々しい心地にさせてくれる作品かと思います。
「萬松供一啜」は一般に「萬壑松風供一啜」と書されることが多く、中国南宋末の禅僧介石禅師の『介石禅師語録』に「恵山煎茶」と題す次の偈頌に由来する禅語です。
「瓦瓶(がへい)、破暁(はぎょう)に清冷を汲み、石鼎、移り来て壊砌(かいぜい)に烹る。萬壑の松風、一啜(いっせつ)に供し、自ら双袖を籠(こ)めて水辺に行く」(江蘇省無錫にある恵山寺にある石泉は天下の名水として名高い。早朝に素焼きの瓶を携え清冷な水を汲んで、石の鼎を崩れた石段に置いてお茶を入れる。谷間から湧き上がる風と共のこの茶をひと啜りし、両袖に腕を入れて渓流の辺りを歩く。)
重なる谷から吹き来る松風を一杯の茶と共に味わうという意味の禅語です。 また単にお茶を飲むだけでなく、大自然を丸ごと一口で飲むような、天地自然と一体となった悠然とした境地を表しています。
雲居禅師の本作は壑と風を省略していますので多くの松の木と共に一杯の茶を喫すという表現になります。雲居国師が好まれた松島雄島の一隅で坐禅し、松の木々と一体となった境地を表すのでしょうか?
縦76.2センチ 横24.8センチ

















