2月15日は涅槃会。お釈迦様が亡くなられた日であると日本では信じられています。涅槃とはニルバ―ナというインドの言葉を音写したもので、炎が吹き消された状態を表し、本来は悟りを意味します。お釈迦様は35歳で悟りを開かれ仏陀となられますが、肉体的には私達と同じ人間でありますから、ケガもすれば病気にもなります。実際に経典にはお釈迦様は頭痛持ちであったとか、赤痢のような病気になったという記述が見られます。お釈迦様の死を涅槃という言葉で表す背景には、肉体が滅する事により、完全な悟りの境地に達せられたという意味があるのです。

　お釈迦様でも病気になられたり、肉体的な苦痛を感じられるというと、仏教とはその程度のものか！或いは何だ御利益無いじゃん！と思われるかもしれませんね。しかし、2500年という世界3大宗教の中で、もっとも古い歴史を持つ仏教は、驚くまでに現実的です。いや、現実を直視してこれに逃げずに行ぜよ！というのが仏教の肝心要であります。

　『大槃涅槃経』には、80歳となられ、弟子達に抱えられるように伝道布教の旅を続けるお釈迦様の様子が描かれています。特にお釈迦様の人生最後の食事のシーンはとても印象的です。

　飾り職人のチュンダの供養を受けることになったお釈迦様、チュンダの用意した様々な料理の中からキノコ料理を選んで召し上がります。偉い僧侶から食事するのが当時の習わしだったようで、他の僧侶や信者はお釈迦様が食事を済ませるのを待っていました。食事を済ませたお釈迦様、そのキノコの料理が素晴らしかった事を褒め称えますが、そのキノコ料理が神々や仏陀の為のものであるからとおっしゃい、すぐ地面に埋めることを命じたのでした。キノコ料理を食したお釈迦様を激しい腹痛が襲います。お釈迦様は弟子達に訓戒します。
「後の世に私がチュンダの料理を食べて命を落としたという者がいるかもしれない。しかし、それは間違いだ。私は老齢で何を食しても体調を崩していただろう。」

　仏教には難しい教えがたくさん存在します。しかし、その原点はお釈迦様の優しい心であり、自らに課した厳しい修行にあると言うことが出来ます。

　涅槃会参観日では、子供達が本堂に荘厳された涅槃図にお参りします。たくさんの神々や人々、動物たちに囲まれて横たわるお釈迦様のお姿から、子供達が何かしら学ぶものがあれば幸いです。