令和八年一月発行
「人間万事塞翁が馬」
昔々、国境の砦近くに馬の調教が上手な老人がいました。しかしある時老人ご自慢の馬が国境を越え隣国の土地に逃げてしまったのです。他の人達は老人が気落ちしているのではないかと同情しますが、その老人は「どうしてこれが福とならぬことがあろうか!」と全く落ち込む素振りもありません。
数ヶ月すると逃げた馬が外国の駿馬を連れて帰って来ました!周囲の人達は老人の言った通りだとこれを讃嘆しますが、周りの人の歓喜を余所に老人は「この駿馬が禍のもととなるかも知れない。」と手放しで喜ぶことはありません。少しすると老人の息子がこの駿馬から落馬して脚を骨折してしまいます。周囲の人はこれを見て同情しますが、老人は再び「これが福をもたらすかも知れない」というのです。
一年程経った時、隣国が突然国境を越えて攻めて来ました。老人の息子と同世代の若者はみんな戦争へ駆り出され、十人のうち九人までもが戦死しました…。老人の息子は落馬で脚を怪我していた為に兵役を逃れ、戦火が収まった後、家族は幸せに暮らしたそうです。
これは『淮南子(えなんじ)』という書物にある「人間(じんかん)万事塞翁(さいおう)が馬」という有名なお話です。我々が感じる幸福とか不幸は時節や様々な条件で刻々と変化する者だから一喜一憂せずに虚心坦懐に生きなさいという戒めですね。頭で理解していても出来なさそうな事ではありますが、凄く落ち込んだ時など、こんな考え方が出来れば少し楽になるかも知れないです。
瑞巌寺雲居国師の教えの中に「今日の楽は明日の苦、今日の苦は明日の楽。今生の楽は来世の苦、今生の苦は来世の楽。」があります。来世のことを考える暇がある人は少ないかも知れませんが、とりあえず日々時間を活かし、前向きに一所懸命生きたいものです。
















