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法螺貝 住職の法話

令和五年十二月発行

「何の為にここにいる?」

『維摩(ゆいま)経』という経典があります。こちらは在俗の立場でありながら、お釈迦様の弟子を上回る境涯を持った維摩居士が主人公。いわゆる釈尊十大弟子とも尊称されるお釈迦様の高弟達を、維摩居士がケチョンケチョンに遣り込めるというユニークな経典です。
 経典の主役、維摩居士は病に罹っており家で静養しています。お釈迦様は居士を見舞う為に弟子を派遣しようとしますが、皆、以前に維摩居士に遣り込められた経験があり、お釈迦様の願いを断ります。しかし、ひとり文殊菩薩がお釈迦様の願いに応じ、居士のもとに向かうことを申し出ると、弟子達はこぞって文殊さんが行くならば!とばかりに揃って居士の居室を訪れることになりました。多くの高弟達が維摩経の中で負け役を演じるのですが、最も気の毒な役回りなのがお釈迦様の片腕とも言える舎利弗さん…。
 維摩居士は見舞いの為に方丈に集まったたくさんの弟子の中で、舎利弗尊者の心中を洞察して其の非を咎めます。
「たくさんの弟子達がこの方丈に集まっている。しかし維摩居士は敷物を準備しない。これは失礼じゃないのか?」とふと思った舎利弗さん。維摩居士はその思いに気付き、「舎利弗尊者!法を求めるものは命さえ惜しまないというではありませんか!あなたはこの場所にお見舞いに来たのですか?仏法を学びに来たのですか?それとも敷物に座りに来たのですか?」と叱責します。
 我が身を恥じた舎利弗さんは居士に謝罪すると、さらに法談は続き昼飯どきに。ここで舎利弗さん、余計なことを考えなきゃ良いのに「もうお昼も近いなぁ。我々僧侶は午前中のうちに食事をしなければいけないのに…。食事はどうなっているのだろう?」と思ってしまいます。すると維摩居士、「舎利弗さん!あなた何度言わせるのですか!あなたはここに見舞いに来たのですか?法を求めて来たのですか?それとも食事をしたくて来たのですか?」とまた叱責…。  舎利弗尊者の名誉の為に申し上げると舎利弗尊者はお釈迦様が最も頼りとした弟子で、舎利弗の盟友とも言える目連尊者と共に初期仏教の布教活動に最も力を発揮した僧侶です。お釈迦様の伝統を重んじる上座部仏教の代表的な僧侶だけに、上座部とは真逆な立場にある大乗仏教の代表的な経典である維摩経では損な役を担わされているのでしょうね。

 話は逸れましたが、ここで着目して頂きたいのは、維摩居士に指摘した通り、舎利弗さんが本来の目的を蔑ろにして、本分を忘れてしまっているということです。私たちも普段の生活を省みると本分からズレたところで足踏みしたり、目的の為の手段がいつの間にか目標となっていたりすることが少なくありません。

 しっかり脚下を見つめ行動しましょう!
 
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