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法螺貝 住職の法話

平成二十八年四月発行

天上天下唯我独尊

 4月8日はお釈迦様のお誕生日であると日本の仏教では信じられています。釈迦族の王子として誕生したお釈迦様は、母マーヤ様が出産の為に帰郷する道すがらのルンビニー園でこの世に誕生されました。
 よく知られる伝説では生まれたばかりのお釈迦様は東西南北天地にそれぞれ七歩進まれ、片手は天を指差し、片手は地を指差して「天にも地にも我ひとり尊し」と宣言されたと言います。
 チベットなどの文献ではこの後に、私がこの世に誕生するのはこれで最後であるという意味の語句が続くそうです。悟りを開き成仏するという事は、輪廻(生まれ変わり)を抜け出ることですので、お釈迦様は今生で悟りを開く事を予言したのであります。
 経典の原意はしばらく置き、生まれたての赤子がとことこ歩き、何やら解釈に困るような意味深きことを宣誓するのは現実離れした事であります。しかし、長年子宝に恵まれなかったと言われるマーヤさんが郷里にほど近い地で、立派な王子に見えた安堵や喜び、そして誇らしさは如何ばかりだったでしょう?
 私は「天上天下唯我独尊」という言葉、仏母マーヤ様が我が子を手にした感動を伝えるものだと理解しています。そして自分自身が尊い存在であることを感謝し、他にも尊きものを見出すのが仏教という宗教だと思っています。しかし、この尊きもの、真にその有難さに目覚める為にはそう簡単ではありません。苦しい経験や悲しみを乗り越えたところに実感出来るものです。


 
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